【院長コラム002】 熱中症
いよいよ梅雨が明け夏本番を迎えようとしています。熱中症が急増する時期になります。
“熱中症”の事をなんとなく知っている?と思っているのではないでしょうか。熱中症について、原因や予防、対処法を今一度整理しましょう。
“熱中症”は日射病や熱射病などの総称です。
高温下での運動や労働のため、体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かくなったりして、体温の上昇やめまい、けいれん、頭痛などのさまざまな症状を起こす病気のことです。 体温上昇、発汗停止とともに虚脱・けいれん・精神錯乱・昏睡などを起こします。重症化すると生命の危険を伴うこともあります。
熱中症はどのようにして起こるのか?
熱中症を引き起こす条件は、「環境」と「からだ」と「行動」によるものが考えられます。
「環境」の要因は、気温が高い、湿度が高い、風が弱いなどがあります。
「からだ」の要因は、激しい労働や運動によって体内に著しい熱が生じたり、暑い環境に体が十分に対応できないことなどがあります。
その結果、熱中症を引き起こす可能性があります。
人間の身体は、平常時は体温が上がっても汗や皮膚温度が上昇することで体温が外へ逃げる仕組みとなっており、体温調節が自然と行われます。
熱中症を引き起こす3つの要因
体温の上昇と調整機能のバランスが崩れると、どんどん身体に熱が溜まってしまいます。
このような状態が熱中症です。
※環境省ホームページ「熱中症予防情報より抜粋」
熱中症は重症度によって、次の3つの段階に分けられます。
熱中症が起こりやすい場所
熱中症といえば、炎天下に長時間いた、真夏の暑いなか運動をしていたといったケースを想像するかもしれません。しかし、実際はこうした典型的な場面ばかりではありません。実は、梅雨の合間に突然気温が上がったなど、身体が暑さになれていない時期にかかりやすい病気でもあります。
具体的には、次のような環境では注意が必要です。
・気温が高い、湿度が高い
・風が弱い、日差しが強い
・照り返しが強い
・急に暑くなった
意外なところでは、気温が低い日でも湿度が高いと熱中症にかかりやすくなります。
また、家の中でじっとしていても室温や湿度の高さから熱中症にかかることもあり、
救急要請時の発生場所では、住宅等居住施設が全体の37%を占め最も多く、次いで道路・交通施設が25%を占めています。最近ではこの様な室内型熱中症が注目されています。
熱中症を予防するには、次のようなことに気をつけましょう。
○暑さを避ける
外出時にはなるべく日陰を歩く、帽子や日傘を使うなど。
家の中では、ブラインドやすだれで直射日光を遮る、扇風機やエアコンで室温・湿度を調整するなど。
○ 服装を工夫
理想は、外からの熱の吸収を抑え、体内の熱をスムーズに逃がす服装。
素材は、吸収性や通気性の高い綿や麻などがいいでしょう。
また、熱がこもらないよう、ゆったりとしたデザインもおすすめです。
薄着のほうが涼しいとはいえ、インナーを着たほうが肌とインナー、インナーとアウターの間に空気の層ができ、外からの熱気を遮断してくれます。
○ こまめな水分補給
暑い日には知らずしらずのうちに汗をかき、体内の水分が失われているもの。のどが渇く前からこまめに水分を補給しましょう。
※ただし、コーヒーや緑茶などのカフェインが多く含まれている飲み物、アルコール類は利尿作用があるので適しません。
また、汗をかくと、水分と一緒にミネラルやビタミンも失われます。水分補給だけではなく、ミネラルも補給するようにしましょう。
ちなみに、スポーツ飲料は水分とミネラルを同時に補給できますが、糖分が多いのが欠点。飲み過ぎには注意が必要です。ミネラルを補給するには、麦茶などのほうがいいです。
○暑さに備えた体作り
2015年に、信州大大学院により、熱中症予防のための暑さに強い体づくりの方法として「やや強めの運動の後、糖質とタンパク質を摂取することが有効」という研究結果が報告されました。朝夕の涼しい時間帯に1日15~30分、1週間に4日以上運動を続けると効果的とされています。目安はじっとり汗をかく程度で、体力の7割程度の負荷で、各自のペースで行いましょう。 自力で汗をかける体づくりも大切なポイントです。
ウォーキングやランニングなどの運動で汗をかく習慣を身につけることも、大事な予防法の一つです。また、糖質とタンパク質を同時に摂る手軽な方法として、「牛乳をコップ1杯(200ミリリットル)」がすすめられています。熱中症予防によく利用されているのが、塩分と糖分が含まれている経口補水液やスポーツドリンク。運動や発汗のし過ぎで体内のナトリウムが減ったときに水分だけを摂ると、体内のナトリウム濃度が低下するのを防ぐため、水分を吸収せずに尿として排出してしまいます。水分とともに適量の塩分を摂取することには水分を体内に留める働きがあり、また糖質は腸での水分の吸収を早める働きがあります。筋力アップ、熱中症予防に必要な運動後の牛乳は、若年成人でコップ2~4杯、小中高生や40~60代の中高年でコップ1~2杯。もっと多めに(あるいは少なめに)飲みたい場合は1~4 杯の間で調節することが、すすめられています。
熱中症が疑われるときに牛乳を飲むのはお勧めできません。牛乳は体温を上げる働きがあるので発汗量が増え、逆に脱水症状を助長する恐れがあります。
牛乳はあくまでも熱中症予防のための摂取です。
発熱や嘔吐、熱中症には経口補水液が有効ですが、健康時には塩分が強く感じられます。またスポーツドリンクは糖質が多いので、運動量が多くない方は飲み過ぎには注意が必要です。
熱中症が疑われる場合は、次のような応急処置を行いましょう。
熱中症を疑う症状があり、意識が無いまたは呼びかけに対する返事がおかしい場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
*全日本病院協会ホームページ「熱中症について」
*厚生労働省ホームページ
より抜粋